研究概要 |
現存の制癌剤はいずれも副作用が強く,また癌細胞がそれらの制癌剤に対して耐性を示すようになってきたので,作用機作を異にする新しい制癌剤の開発が強く望まれる。このプロジェクトは天然植物から抗腫瘍性物質,即ちアポトーシスの誘導能のある成分を見出し,その構造決定とその作用機作を明らかにする目的で研究を以下のように行った。始めに,渋柿の構成成分のエピガロカテキンガレート(EGCG)がヒト白血病細胞増殖を強く抑制し,その作用機作を調べた結果,細胞の形態変化,即ちアポトーシス小体がみられ,且つDNAの断片化が認められた。次に,胃癌細胞に変えてEGCGの前と同じ効果を調べた結果,強い抑制作用が見られ,その作用機作もアポトーシスが関与していることを明らかにした。次に,アオキの葉について,我々の研究で既にその水抽出物が強い抗変異原性を有することを見出していることから,これに関連してヒト白血病細胞増殖の影響を調べた結果,その粗抽出物に強い細胞増殖抑制効果が認められ,この活性物質の単離を進めた。先ず抽出物をトヨパールHW40Sで分離を行い,画分1,2,3を得て,画分3に活性が見られた。更にこの画分をHPLCで分離した結果,活性物質P1,P2およびP3を単離した。活性の弱いP1の構造決定をMS,^1H-NMR,^<13>C-NMR,COSY,DEPTなどにより行った結果,分子式C_9H_<16>O_4 (MW188)をもつ既知の杜中に含まれるオイクミオールであることを確認した。他の2つの物質は活性は強く,それらの物質の構造決定を現在行っているところである。
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