研究概要 |
現在使用されている制癌剤は副作用があり,かつ癌細胞がそれらの薬剤に対して耐性を示している。したがって,作用機序の異なる新しい天然からの制癌剤が望まれる。 このプロジェクトは天然植物から抗腫瘍性物質,即ちアポトーシスの誘導能を持つ成分を見出し,その構造決定と作用機作を明らかににすることを目的に,以下なのような研究を行った。 はじめに,緑茶を醗酵させて加工される紅茶の主要成分であるテアフラビン類の胃癌細胞に添加したところ,細胞の増殖を強く抑制した。この細胞をヘキストで核染色して蛍光顕微鏡で観察したところ,核小体がみられた。それらの物質で処理した胃癌細胞から抽出したDNAをアガロース電気泳動を行ったところ,DNAラダーが観察され,濃度依存的かつ経時的にラダーが濃くなっていくことを明らかにした。 つぎに朴ノ木の葉は岐阜県飛騨地方でホウ葉味噌やホウ葉寿司などで知られている。このホウ葉より抗酸化性物質としてホウノキオールを単離同定した。このホウノキオールについてヒト白血病細胞増殖の影響を調べた結果,強い抑制作用のあることを見出した。さらにCCDカメラで核小体が観察され,かつDNA断斤化が起きていた。 最後に,ビワの葉抽出物よりヒト白血病細胞の増殖抑制効果をガイドして活性物質を検索したところ,ウルソール酸とオレアノール酸を単離同定した。これらの物質はアポトーシス誘導せず,ODC活性.を阻害してこの細胞増殖を抑制していることを明らかにした。
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