ZAP36は分泌顆粒膜の細胞質側に結合している分子サイズ約36Kの分子であり、分子クローニングの結果、ZAP36はアネキシン(リポコルチン)に類似した新規分子であることが判明した。精製したチモ-ゲン顆粒膜分画にはジチオスレイトール存在下で細胞内ホスホリパーゼA2活性が認められたのでこれを酵素源としてZAP36の作用を調べた。精製したチモ-ゲン顆粒膜を放射性リン脂質で標識し基質とした。これにZAP36を加えて反応を行い。遊離してきた放射性脂肪酸を分離定量した。その結果、ZAP36添加量の増加と共にホスホリパーゼA2活性が低下した。以上のことからZAP36はin vitroでホスホリパーゼA2とインヒビターとしての活性を持つことが明らかになった。 ZAP36のATPase活性は、アルファ位とガンマ位に放射標識をもつATPをそれぞれ基質としたとき、化学量論的にADPもしくは無機リン酸が生成することから証明した。また各種のATPase阻害剤の影響を調べたところ、従来のATPaseとは違ったタイプのATPaseであることが示唆された。一方、抗ZAP36抗体によってATPase活性が完全に阻害されたことから、ZAP36が確かにATPase活性を持つことが確認された。ATPに対するKm値は0.12mM、Vmax値は0.1mmol/mg/hであった。この値は通常のATPaseに比べ、ATP親和性は同程度だが加水分解速度は極めて遅いことを意味する。ZAP36は細胞内では、主としてATP結合型で存在し、分泌刺激時にATPase活性が亢進することによってATP加水分解による構造変化を介して分子スイッチとして機能しうると推察した。
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