研究概要 |
動物組織を構成する各種細胞の多様な機能に深く関係すると考えられている、カルシウム依存性のタンパク質修飾酵素であるトランスグルタミナーゼ(TGase)の、生理機能や制御機構を分子レベルで理解し、食環境に起因する多様なシグナル因子が本酵素の関与する生体制御とどのように連係しているかを解明する。 1,動物肝抽出液中のTGase基質タンパク質の検索と同定-各種動物肝の抽出液にビオチンカダベリンを加え、内因性TGaseによるタンパク質へのビオチンカダベリン導入反応を行った。反応生成物をアビジンゲルによるアフィニティークロマトグラフィーにかけ、TGaseの基質候補タンパク質を得た。N-末端部アミノ酸配列の解析と配列ホモロジー解析から、モルモット肝抽出液ではθ型グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST-θ)が、ラット肝抽出液ではグリセルアルデヒド3ーリン酸脱水素酵素(GAPDH)がそれぞれ同定された。精製したヒト胎盤GSTやウサギ骨格筋GAPDHについても、TGaseによるアミン基質の導入が確認できた。GSTやGAPDHはTGaseによる分子間架橋反応の基質にはならなかった。これらの酵素タンパク質の機能が、TGaseによるアミン導入修飾で、どのように制御されるかを解析することが次の課題である。 2,肝細胞TGaseのインスリン応答性-インスリンは、食環境への適応をもたらす代表的なシグナル因子である。ヒト肝癌細胞株HepG2を用いて、TGaseのインスリン応答性を解析している。HepG2細胞のインスリン受容体をA型からB型優位に変換すると、インスリンにより細胞のTGase活性が増加する現象が、予備実験でみられた。インスリンの誘起する多彩な細胞内作用にTGaseが関与する可能性について解析して行きたい。 TGaseの生理的活性抑制機構の解明-微生物の代謝産物中にTGase阻害活性をもつ物質を見出している。
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