動物細胞のシグナル伝達系での情報脂質分子の生合成機構と食品機能因子による分子調節

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09660139
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 島根大学
• 研究代表者: 横田 一成 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (90158361)
• 研究分担者: 滝波 弘一 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40243422)
• キーワード: アラキド酸 / シクロオキシゲナーゼ / アイソフォーム / 逆転写・ポリメラーゼ連鎖反応 / RT-PCR / 必須脂肪酸 / Maclin-Darbyイヌ腎臓上皮性細胞株 / リノール酸

研究概要

動物細胞のシグナル伝達系での情報脂質分子として、アキラドン酸代謝物を取り上げ、必須脂肪酸のような食品機能因子による調節機構を研究した。動物培養細胞株のMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)上皮性細胞株をn-6あるいはn-3系列必須脂肪酸で修飾した後、細胞応答による活性化での2つのシクロオキシゲナーゼ(COX)アイソフォームの遺伝子発現調節に焦点をあてた。逆転写・ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法で、MDCK細胞とマウスSwiss3T3繊維芽細胞より、それぞれCOXの1型と2型を暗号化している約1100bpと900bpのcDNA断片を得た。また、2つのCOXアイソフォームを区別して定量的に測定するために、内部の塩基を欠失させたcDNAを作成しSP6プロモーターを持ったpSP64(poly A)ベクターに組み換えた。それらをin vitroで転写して各アイソフォームに対応する合成cRNAを調製した。COX-2特異プライマーを用いてRT-PCRを行ったところ、MDCK細胞のmRNAと内部標準の2型cRNAから、それぞれ対応する916bpと340bpのcDNA断片の増幅が認められた。細胞応答でのCOX-2遺伝子発現レベルの測定にこの方法を適用した。100μMの濃度でn-6あるいはn-3系列必須脂肪酸で48時間、MDCK細胞株を修飾した後、50nMホルボール-12-ミリステート-13-酢酸と100nMA23187で細胞を3時間、処理した。その結果、n-3系列のα-リノレン酸とエイコサペンタエン酸は、無処理のものに比べCOX-2mRNAレベルを2から6倍、促進した。一方、n-6系列のリノール酸やアラキドン酸は、COX-2遺伝子発現に阻害的であった。これらの結果より、n-6及びn-3系列必須脂肪酸による細胞膜リン脂質の修飾は、COX遺伝子発現に異なった調節効果を示すことが示された。

研究成果

• [文献書誌] 横田一成: "n-6及びn-3系列必須脂肪酸によるMaclin-Darbyイヌ腎臓上皮性細胞株の膜修飾と細胞応答の制御" 日本農芸化学会誌. 71. 285 (1997)
• [文献書誌] 横田一成: "Madification of membrane phosholipids with n-6 and n-3 essential fatly acids regulates the gene erpression of prestaglandclin endoperoxide synthase isoforms upon agonist-stimufation" Prostaglandins,denkotienes and Essential Fatty Acids. 57. 187 (1997)
• [文献書誌] 横田一成: "n-6及びn-3系列必須脂肪酸での脱リン脂質の修飾と細胞応答によるシクロオキシゲナーゼアイソフォーム遺伝子の発現調節" 生化学. 69. 938 (1997)
• [文献書誌] 横田一成: "Modification of membrane phosholipids with n-6 and n-3 essential fatty acids and regulation of arachidonate cascades in cultured Modin-Darby canine kidnisy cells" Proceedings of International Conference on Frontiers in Biotechnology,Trirandrum,India. 48-49 (1997)
• [文献書誌] 横田一成: "Recent REsearch Developments in Agricultural and Biological Chemistry" Research Signpost,Trirandrum(発表予定), (1998)