研究概要 |
必須の栄養成分のアラキドン酸に由来するエイコサノイド関連化合物は、動物細胞のシグナル伝達系に関与するオータコイドである。これらのうち、プロスタノイド類の生合成の律速となるシクロオキシゲナーゼ(COX)の2つのアイソフォームの遺伝子発現レベルの調節機構を解明し、食品因子の作用に関連させた研究に発展させたいと考えた。種々の細胞応答を示すMadin-Darbyイヌ腎臓細胞株をモデル実験系として用いて、逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)による解析を行った。2つのアイソフォームのうち、誘導型として知られる2型は、細胞の誘導の有無に関わらず検出できたが、1型の転写レベルを有意に検出できていない。このことは、本細胞では,1型の発現量は、2型に比べて極めて低いことを示す。また、本細胞株の培養系をモデルにアポトーシスの誘導の評価に関する研究を行った。その結果、発ガンプロモーターのホルボールジエステルによるアポトーシス誘導は、リポキシゲナーゼ阻害材の添加での誘導が相乗的に増加した。内在性リポキシゲナーゼの経路が、生存因子として作用していることが示唆された。 マウス皮膚由来の新規リポキシゲナーゼの構造と機能に関する研究では、共通の制限酵素部位で、マウス8リポキシゲナーゼのC末端側約3分の1部分をヒト15-リポキシゲナーゼ-2の相当する部分と交換したことろ、反応位置特異性が、ほぼ完全に15位へと変化し、さらに、その立体特異性はS型であったことから、このC末端側領域が反応位置特異性を決定していると考えられた。キメラ酵素をランダムに調製し、反応位置特異性を検討した。連続する2アミノ酸づつ、次いで1アミノ酸づつ部位特異的変異の研究の結果、チロシン-603及びヒスチジン-604を、相当するアスパギン酸及びバリンに変換することにより、反応位置特異性が8Sから15Sへと変換されることが明かとなった。
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