本研究では、膜乳化法により調整した均一な1.5、3.3、6.5及び12.2μmの平均粒径を有するコーン油エマルションを用いて、エマルション含有寒天ゾルを調製した。これを二段重ねにした内径24mm、高さ19mmのガラスリングに流し込み、室温で1時間、3℃で18時間放置することによりゲル化し、高さ19mmに切断して静的粘弾性測定用の試料とした。このエマルションゲル中で、油滴は均一に分散していることが予め確認された。大変形の測定法である圧縮破断試験においてエマルションゲルの破断応力及びエネルギーは、油滴径及び油の体積分率の増大により明らかに低下した。微少変形によるクリープ測定では、破断強度ほど明確な差は現れなかったが、フォークト体粘性率は、粒径の増大により有意に低下した。 動的粘弾性は、エマルションゲルを高さ19mm、直径10mmに成形し、周波数3Hzで測定した。貯蔵弾性率、損失弾性率及び損失正接のいずれもが油滴径に対して殆ど変化しなかった。 平均粒径1.5、6.5及び12.2μmのエマルションゲル(油の体積分率は0.1)の咀嚼時における硬さの官能性を、18人のパネラ-(香川大学農学部学生)により一対比較法で調べた。その結果、3種類のゲルの間では、大きい粒径の油滴を含むゲルほど柔らかい傾向を示し、統計的に有意であった。これは、圧縮破断試験及びクリープ測定によるフォークト体粘性率の結果と一致した。 以上より、ゲルの物性評価には静的粘弾性の測定が適切であり、特に、圧縮破断試験の結果が実際の口中感覚と良く一致することが見いだされた。
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