一般に食物アレルギーは子供に多くみられ、大人になるにつれて徐々に軽減される。しかしながら、蕎麦アレルギーは、患者数は少ないが時として大人でも死に至る重篤な症状(アナフラキシー)を起こすという特徴を持っている。本研究では蕎麦タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製し、昨年度作製した小麦たんぱく質に対するモノクローナル抗体との比較検討から、蕎麦アレルギーの特殊性をエピトープの面から解析することを目的とした。 常法に従い、蕎麦タンパク質に対する10個のモノクローナル抗体を取得した。これらをウエスタン解析してみたところ、複数のたんぱく質に反応した事から、蕎麦中の多くの蛋白質がエピトープを共有する群として存在していることが明らかとなった。同様の現象は小麦の場合にも見られたが重複の程度は蕎麦の方が高かった。また、そのうちの1つ(No.2抗体)は、蕎麦タンパク質に対するモノクローナル抗体であるにもかかわらず米タンパク質(分子量約33kDa)にも反応した。しかもこのタンパク質は、蕎麦アレルギー患者血清だけでなく、米アレルギー患者血清、さらには小麦モノクローナル抗体No6とも反応した。これらの結果は、分子量約33kDaの米タンパク質は穀物アレルギーの共通抗原として非常に興味深いものであることを示唆している。なお、患者血清とモノクローナル抗体では、ウエスタン解析における競合はかからなかったため、エピトープは異なるものと考えられる。
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