1. 最近欧米諸国で小麦アレルギー患者に対する低アレルゲン食品として注目され始めた小麦の古種であるスペルト粉(Triticum spelta)は製パン性分析、一般成分分析、脂肪酸分析、アミノ酸分析、蛋白質の電気泳動的解析、ヒト、ラット、マウスポリクローナル抗体を用いたウエスタン解析では、通常の小麦粉(ヘルメス粉)との相違を明らかにすることはできなかった。 2. ヘルメス粉抽出液を抗原として得られたモノクローナル抗体7つを用いてヘルメス粉蛋白質に対するウエスタン解析を行ったところ、高分子領域(80〜100kDa)の複数の蛋白質と反応するもの、低分子領域(30〜50kDa)の複数の蛋白質と反応するもの、どちらにも反応するものに分かれた。これらの反応性はスペルト粉蛋白質に対しても同様であった。モノクローナル抗体であるにも拘わらず複数の蛋白質と反応した事から、小麦粉中の多くの蛋白質がエピトープを共有する群として存在していることが明らかとなった。これまでの分析結果からは、スペルト粉が免疫学的・食品学的に新規食品素材として有用であるという証拠は見いだされていない。 3. 蕎麦蛋白質に対する10個のモノクローナル抗体を取得した。そのうちの1つ(No.2抗体)は、蕎麦蛋白質に対するモノクローナル抗体であるにもかかわらず米蛋白質(分子量約33kDa)にも反応した。しかもこの蛋白質は、蕎麦アレルギー患者血清だけでなく、米アレルギー患者血清、さらには小麦モノクローナル抗体No6とも反応した。これらの結果は、分子量約33kDaの米蛋白質は穀物アレルギーの共通抗原として非常に興味深いものであることを示唆している。
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