研究概要 |
東北地方各地の各種二次林における稚樹の発生状況を調べるとともに,岩手大学農学部附属滝沢演習林のコナラ二次林を対象として母樹保存作業および傘伐作業により天然下種更新を実施することとし,それぞれ約0.8haの試験区を設け,調査・測定をおこなった. 1.稚樹の二次伸長を支配する地床の光条件の解明 二次伸長は,相対日射量と密接な関係にあり,相対日射量が20%を越すと,相対日射量の増大にともない二次伸長する実生の割合が上昇した.相対日射量の高い場所では,成長終了期における実生重は,当初の種子重を大きく上回り,葉の光合成が1年目の成長に大きくかかわっていた.そこでは,二次伸長した実生としなかった実生とで重量は大きく異なっていた.二次伸長した実生どうしを比べると,二次葉面積の種子重への依存は小さかったが,種子重が小さいと二次伸長は起こりにくかった.上胚軸伸長開始時期と二次伸長の有無に関しては,上胚軸伸長を早く開始したものほど二次伸長の頻度が高かった.このことから,二次伸長するか否かは芽生えの初期成長段階で決まっている可能性がある. 2.雑草木との競合下における稚樹の物質生産機構の解明 完全刈り払い区,2回刈り払い区,1回刈り払い区および無刈り払い区,また比較のための地床掻き起こし区を設け,雑草木の種組成と繁茂状況を調べ,芽生えの成長との関係を分析した.1回刈り払い区や無刈り払い区では,芽生えの成長は著しく抑制され,このままでは次年度以降の旺盛な成長は期待できないと判断された.完全刈り払い区と掻き起こし区では,強光,高温,低湿度など,芽生えにとって厳しい環境下におかれるにもかかわらず,良好な成長を示した.しかし,前者では夏場の高温乾燥期に気孔コンダクタンスの低下が,後者では養分欠乏が生じやすいことがわかった.
|