研究概要 |
1. コナラの天然下種更新面に雑草木を除去する試験区(試験区A)と除去しない試験区(試験区B)を設け,発生して2年目の稚樹の幹枝の伸長過程を詳細に調べ,幹枝系のタイプ分けをおこない,幹枝系タイプと生産力との関係や幹枝系にかかわる要因について考察した.幹枝系は,主軸伸長を継続し枝分岐が一次枝までの稚樹(Ia)と二次技までの稚樹(Ib),主軸伸長を停止し枝分岐が一次枝までの稚樹(IIa)と二次枝までの稚樹(IIb)の4タイプに分けられた.試験区Aでは4タイプの稚樹が見られたが,試験区BではIa,IIaの2タイプのみであった.稚樹あたりの伸長ユニット数およびそれらの総伸長量は,試験区AのIIbの稚樹で最も大きく,地際直径も同様であり,この幹枝系タイプの稚樹が最も高い生産力をもっていた.発生当年の周期伸長の回数が,稚樹の幹枝系の発達を通して個体生産力を決め,初期定着に大きく関与すると考えた. 2. コナラの天然下種更新面における1年生稚樹のガス交換特性および重機による地床処理がもたらす土壌圧密化の影響について明らかにした.光合成の強光阻害は,1年生稚樹では更新面のものでも林床のものでも認められなかった.Pmax(光飽和光合成速度)は,生育日射量の増大にともない大きく変化し,若齢木を含めたpmax-LMA(葉面積あたり重)関係は直線的な上昇を示した.晴天日にgl(気孔コンダクタンス)の日中低下が認められたが,幼少個体のわりには低下の程度は小さいかった.地床処理により,土壌表層の容積重が約30%増大し,処理区では,無処理区に比べLMAは大きく.Pmaxは低かった.しかし,日中のglのレベルは処理区で高く,年成長量にちがいはなかった.コナラ稚樹は,強光および乾燥環境への適応性をもっており,後生稚樹による更新が可能である.また,小型重機導入による土壌圧密化により,稚樹の初期成長が大きく損なわれることはない.
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