1.山形県における巨樹・名木について、巨樹・名木のおかれている環境、故事伝承、信仰対象、独特の呼称、保護指定の状況などについて現地調査をした。また、一部地域住民からの聞き取りを実施した。 巨樹・名木の多くは主に里山付近に分布しており、地域によっては樹木の種類に特徴がみられた。また、樹木にまつわる伝説として、歴史的、宗教的、民族的なものなどがみられ、それらの樹木は今も地域の人々に大切に保存されている。巨樹・名木は、さまざまな形で人々の暮らしの中に機能してきたことが伝説などを通して垣間みることができた。 2.1923年(大正12年)に山形県立村山農学校林学教室で編纂された『山形県老樹名木写真帖』には県内各地の老樹・名木59本が記載されている。その老樹・名木について現地調査を行った。 調査の結果、現存するもの34本、消失したもの25本であった。消失の原因としては、枯死、自然災害、売却、工事などがあげられる。現存する34本の樹木については環境的に恵まれた条件下にあり、また故事伝承、独特の呼称、信仰対象、保護指定などの社会的要因に大きく影響を受けていることがわかった。なかでも伝説を伴う樹木が多く残っているのが特徴的であった。 3.1991年に環境庁によって編集・出版された『日本の巨樹・巨木林(北海道・東北版)』を基に、山形県における巨樹の実態を把握してみた。 山形県における特徴としては樹種別総本数でみた場合、スギ、ケヤキに続いてブナが多くみられたことである。しかし、ブナは全国的にみて山形県が最大の蓄積、面積を占めながら山地に多いため、本数の割には人々との社会的つながりは希薄である。信仰の対象としては、スギ、ケヤキ、故事伝承をもつものとしてはスギ、サクラ、孤独の呼称をもつものではスギ、マツが多くみられた。これらの巨樹の多くは天然記念物の指定をはじめ、地域による樹木保存の制度などにより保護されてはいるが、その取り組みは地域によって差異がみられた。
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