紙谷:落葉広葉樹二次林に創出した大きさの異なる人工ギャップ内外において、様々な光レベル下で実験的に落葉層の攪乱処理を行い、落葉層の攪乱と光レベルの違いが植物の発生種数、実生の種多様度、また、実生発生パターンと種子重量との間の関係を明らかにした。その結果、落葉層が攪乱された場合でもされない場合でも光レベルと発生種数との関係は有意であったが、落葉層が攪乱された場合に光レベルはより強く影響した。落葉層が攪乱され光レベルが平均以上の場合、発生種数は多くなったが、特定の種が優占したため種多様性は低くなった。発生した植物はその発生数により、(1)落葉層の攪乱と光レベルの両方に影響された種、(2)落葉層の攪乱だけに影響された種、(3)一定の傾向がない種の3タイプに分かれた。落葉層が攪乱され光レベルが平均以上の場合、発生した種の種子重量と全体に対するそこでの発生割合には有意な負の相関があり、軽い種子をもつ種の発生はまず落葉層の攪乱に影響され、その中でもより軽い種子をもつ種は落葉層の攪乱に加えて光レベルの違いにも影響されることが明らかになった。 箕口:ブナ天然林のギャップ内外に森林性野ネズミの生け捕り罠を設置し、森林構造とそこを利用する主要な野ネズミの行動圏の関係を明らかにした。その結果、出現した4種の野ネズミ(ネズミ亜科:アカネズミ・ヒメネズミ、ハタネズミ亜科:ヤチネズミ・ハタネズミ)の分散様式は集中分布であったが、ネズミ亜科のアカネズミ、ヒメネズミは不均質な構造を内包する広い行動圏をもち、選好性はあるものの比較的どの構造も利用していた。一方、ハタネズミ亜科のヤチネズミ、ハタネズミは行動圏が狭く、森林の不均質な構造の一部分に対する選好性が強いため、集中的にある特定の構造だけを利用する傾向があった。そして林冠ギャップがその特定の構造minor habitatとして機能していることがわかった。
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