研究概要 |
樹木の紫外線防御機能を調べるため,スギの芽生えに7.5kJ/日(UV-BBE)の紫外線照射をおこない、紫外線照射の影響と紫外線防御機能の解析をおこなった。 紫外線を照射したスギの初生葉を用いてクロロフィル量,フラボノイド量,光合成関連遺伝子群の発現量、フラボノイド合成に関与するカルコンシンターゼ遺伝子(CHS)の発現量、活性酵素消去系酵素であるスーパーオキシドデスムターゼ(SOD)、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)、グルタチオンレダクターゼ(GR)の酵素活性を照射後の時間経過を追って測定した。また、RT-PCR法を用いてSODとGRのcDNA断片をクローニングし、既に保有しているAPXcDNAと合わせて遺伝子発現の解析に用いた。 紫外線照射による可視障害、クロロフィル量の減少、光合成関連遺伝子群の発現量の変化はみられなかった。しかし、紫外線防御に関与するフラボノイドの蓄積量が照射7日目に増加し、それに先だってCHSの発現量も増加した。また、紫外線照射中に展開した針葉中ではSODとAPXの活性がそれぞれ対照区と比較して約1.4倍および2倍に上昇し、APX遺伝子の発現量もわずかではあるが増加した。以上の結果から、スギの芽生えでは紫外線増加に対する防御機能としてフラボノイドの蓄積量が増加するが、活性酵素消去系酵素の活性増加はフラボノイドの蓄積による紫外線防御機能の獲得以前における重要な防御機能を演じていることが示唆された。
|