日本の林業・木材産業は国際化の枠組みの中で大きく変貌しているが、この枠組みが変化したときどのような影響が及ぶのか、研究の最終目標はこれを計量的に分析するものである。 日本の木材市場において1960年代以降構造的に影響を及ぼしてきたのはアメリカ、カナダであった。丸太や4インチ角製材品の大量の対日輸出、これらは短期間に日本市場を席巻した。しかし、80年代以降北米林業は変化している。それはオールドグロス林の激減、その保護を求める大きな流れであり、原生林採取林業から二次林・人工林林業への移行である。採取林業における生産地の奥地化や環境保全からの伐採規制は、北米林業、ことに太平洋沿岸地域の林業を制約するようになった。このことはアメリカ国内では南部の林業、世界的にはNZ林業やチリ林業、南ア、ポルトガルなどの比較優位をもたらしている。そこでは国際企業による短伐期育成林業を展開させており、新たな企業間競争を生んでいる。また北欧やオーストリアからの製材品の対日輸出が増加したのも北米太平洋沿岸林業の比較劣位など世界的な林業構造の変化の結果である。 また、東南アジアやロシアを対日市場からみたとき、比較劣位化は避けられない。世界的に林業は二次林・人工林段階に移行している中で、原生林採取林業に依存するこれら国々の政策の世界市場への波及効果は極めて限定されたものにならざるをえない。その中でインドネシアの木材産業化政策は80年代から90年代にかけての世界のパネル市場に一定の影響を及ぼした。
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