わが国はウルグアイラウンドにおいて林産物の関税について最終的に基準税率から約50%、交渉開始時の実行税率から約30%の引き下げで決着した。1995年から5年間段階的に実施され、99年1月完了した。現在、SPF(トウヒ、マツ、モミ)製材品、合板、集成材などに数%の関税をかけている。この関税をめぐってはアジア・太平洋経済協力(APEC)や日米首脳会談等で早期自由化を求める圧力が強まっている。これに対してわが国は森林・林業には多面的な役割があり、経済合理性だけで考えられないと拒否の態度を明らかにしている。 ところで今日、世界経済は各国経済の相互依存関係が深化したところに大きな特徴がある。それは貿易の拡大にとどまらず、世界的な規模での企業の展開の側面を無視することができないのである。ほとんどの企業は紙パルプ生産部門を軸に、木材・木製品の生産のほか、原料基盤である森林経営を展開している垂直的・水平的統合型企業である。さらに複数国で事業活動している多国籍企業でもある。こうした巨大企業は、主に世界的なM&A(企業の買収・合併)によって実現されたところに特徴があり、アメリカ、ヨーロッパ、日本の三極において国内企業同士のM&Aのほか、域内企業同士や域内企業と域外企業のM&Aが急増しているのである。 各国の経済活動はー国内はもとより、地域内で完結させることはできない。「規模の利益」のあくなき追求、国境を越える提携によって企業の活動も世界的な規模で展開することを必然化させており、これが林産物の自由貿易の推進を各国の共通課題とさせる背景である。
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