日本の林業・木材産業は国際化の枠組みの中で大きく変貌しているが、この枠組みが変化したときどのような影響が及ぶのかを経済的に分析した。WTO、SF(sustainable forestry)にかかわる世界的動き、産出国の輸出規制・木材産業政策、かたや日本市場の開放が日本の木材供給構造にどのような変化をもたらし、それが木材産業の構造変化にどの程度波及するか、また国産材の生産にどの程度影響が及ぶのか、を定性的に解明した。 世界的な人工林段階への移行は、カナダBC州や熱帯材産地などの採取的林業の後退を引き起こしている。一方、人工林林業をめぐってはアメリカや新興林業国(ニュージーランド、南アフリカ、チリ、ブラジル)の参入とともに国際間の競争が激しさを増している。その中に置かれた日本林業は、国際化という枠組みの下で後退の度を露わにしており、日本の木材自給率は2割を切ろうとしている。1980年以降の日本の木材価格(中でも立木、丸太)の大幅な下落は、国際価格への調整過程として把握することができよう。しかし、この国際価格には環境費用を含む森林の外部経済効果が内部化されていないことに留意しなければならない。WTO体制は自由貿易を推進する組織ではあるが、それが国際企業の支配をいっそう拡大させるためのものであることはいうまでもない。国際的な企業は新興林業国への進出を試みるとともに、市場経済への改革が進む東欧においてもその地歩を築きつつある。
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