一般的な荒廃地や火山性荒廃地を木本植物で早期に緑化するためには、第1に表面侵食の防止、第2に降灰や亜硫酸ガスの影響などを軽減し、木本植物の成長促進を図ることが重要である。そこで、各種荒廃地の森林再生用資材として開発したポリエステル繊維ランダムウェバーを主な素材とする被覆資材の侵食防止効果とこれに組み込んだ菌根菌(コツブタケ)の樹木の生育および樹林形成に及ぼす効果を検討するため、モデル斜面と現地のり面でアカマツおよびクロマツの種子と苗木を用いて、侵食や生育におよぼす影響を調査した。 被覆資材の土壌侵食防止効果は非常に高く、自然降雨ではまったく土砂流出は認められなかった。人工降雨を用いた実験でも時間降雨量200mmまでの降雨では土壌侵食が発生しなかった。また、被覆資材を張り付けることによって、裸地面に比ベ、日中と夜間の土壌表面温度の差が少なくなり、土壌水分も高くなった。さらに、土壌化の進行が認められた。 鹿児島県桜島の火山性の荒廃地における被覆資材と菌根菌の施用では、樹木の亜硫酸ガスと降灰に対する耐性を増大させ、亜硫酸ガスの影響と考えられる枯損率が著しく減少した。また、愛媛大学農学部のマサ土モデル斜面における被覆資材と根根菌の施用では、樹木の根元直径成長、樹高成長および物質生産量に及ぼす効果が非常に大きかった。菌根菌の感染率も60%程度と比較的高い結果が得られた。これまで荒廃地やのり面に木本植物を種子や苗木で導入する場合には、いかにして侵食防止と樹木の生育を図りながら、生育基盤である下層土の土壌化を図るかが重要な課題であった。この被覆資材や外生菌根菌のコツブタケの施用は、これまでの課題を解決する有効な手段であると考えられ、森林再生のための画期的な材料であることが確認された。
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