荒廃地の再生用資材として開発したポリエステル繊維ランダムウェバーを主な素材とする被覆資材の侵食防止効果とこれに組み込む微生物の菌根菌(コツブタケ)および木本植物等の利用方法を検討するため、モデル斜面と現地のり面でアカマツならびにクロマツの種子と苗木を用いて、侵食や生育に及ぼす影響を8年間にわたって調査した。被覆資材の土壌侵食防止効果は非常に高く、自然降雨および人工降雨ではまったく土砂流出は認められなかった。また、土壌環境を改善し土壌化を促進させるのに有効であることが確認された。 アカマツ種子播種後、コツプタケの胞子を散布し、被覆資材を施用した試験区では、掘り取り調査の結果、コツブタケ(PT)に感染したアカマツと非感染のアカマツとの間には、根元直径、苗長および根量等に明らかな相違が認められ、また、被覆資材にアカマツ種子を組み込んだ試験地の成長量は対照区に比べ、根元直径および苗長に著しい差が認められ、さらには、被覆資材区と対照区との間には根系の発達形態に明らかな相違が認められ、その有効性が確認された。被覆資材を滋賀県大津市の田上山でクロマツ植栽後6年を経過した場所に張り付けたところ、8年間で根元直径および樹高成長が対照区比べ、著しい増加率を示した。被覆資材を張り付けた後、2年生のクロマツ苗木を植栽した桜島の野尻川試験地では亜流酸ガスに対して強い耐性を示した。 以上のことから、被覆資材およびコツブタケ(PT)は樹木の根元直径、樹高成長ならびに現存量に及ぼす効果が非常に大きいものと考えられた。また、火山性の荒廃地においては亜硫酸ガスに対しても強い耐性を示すものと考えられた。これらのことから、被覆資材と菌根菌は、何らかの原因で破壊された荒廃地等を含む森林再生に有効であると推察された。
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