研究概要 |
プロセッサー作業に伴う枝条の集積による森林生産環境への影響を緩和するために,実施した実験調査によって得られた成果を2つの課題に区分して報告する。 1.枝条を林内に還元した場合としない場合で林地の環境はどれだけ違うか,どのように還元すべきか。 チップを通過した雨水のpHは林外雨に比べて高く,特に技葉のチップで高い。チップを散布した土壌のpHも対照区に比べて高く,酸性が緩和される。土壌の水溶性イオンの量は枝葉のチップを散布したプロットで水溶性K,Ca,Mg,Naが増加した。チップ散布区の苗木の成長は,対照区と比較して成長量に差はないが,チップ散布区で苗高は低く,直径成長が高い。これはチップ散布によるマルチングの効果によって,雑草木との競合が少ないことを反映している。 2.堆積した枝条が下方にどの程度移動するのか,枝条の養分はどれだけ流出するか。 土場に堆積した枝条は斜面に沿って下方に移動することはなく,その場で鉛直方向に沈降する。形態としてのチップの変化は,枝条チップでは分解しその形状が失われ,材チップでは小さいほど散布時の状態を保っているが,大きくなるにつれ,チップの間隙に表層土が流入し,状態の変化が大きい。 チップの有機物の分解速度は,枝葉のチップが最も速く,材チップは枝葉のチップに比べて分解は遅い。材チップの厚さ4mmが,9mm,17mmに比べて分解が速い。気象条件の相違では,尾根に近い乾燥している調査区と斜面下部で近くに流水のある水分条件の良い調査区と対比してその差は認められない。 今後,さらに,実験を継続することで,気象条件の相違や材チップの分解,堆積した枝条の移動量について経年変化を明らかにし,マルチングの効果については樹木の生長期に観察する計画である。また,散布作業の生産性と労働負担についても,事例を積み重ねて作業システムの検討を加える。
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