模型実験から、新燃岳においても火砕流はかなり高温を保って常に後続の流れが新しいフロント部を形成しながら、高速度で流化することが明らかになった。そのため火砕流の被害は予想以上に広範囲に及ぶと考えられる。新燃岳火砕流堆積物の層序調査と^<14>C法による炭化木の年代測定結果から、矢岳川流域ではほぼ6〜12×10^6m^3規模の火砕流が発生するものと予測される。つぎに火山活動とそれに伴う火山泥流の発生を予測する一つの方法として、地表面の温度変化および温度分布を調査した結果、新燃岳については1992年〜1993年までは高温部が1822年の旧火口を中心として分布していたのが、1994年以降はこの西側に新たな噴気箇所が現れ、高温部が西側へ移動し始めていることがわかった。硫黄谷ではここ数年の間に高温部(60℃〜80℃)の範囲が広くなってきており、今後さらに広がる傾向がみられた。また新湯温泉では道路法面部が、手洗温泉では湯の池川上流両岸山脚斜面部に高温部領域が広がっていることがわかった。これらの情報を基に今後ある程度霧島火山地域の災害危険度予測が可能なようになってきた。これまでに新燃岳で発生した火砕流の実際の温度を知るため、火砕流試料に対し電気炉による加熱試験を行った結果、色彩的特徴、溶結度から1771年の火砕流は約700℃、1717年9月の火砕流は約800℃、1717年2月の火砕流は約1000℃程度であったと推定される。新燃岳の噴火による火砕流被害域を想定するため、1959年の噴火前と噴火後の航空写真を用いて、火口周辺の植生の破壊および被覆度測定を行った結果、火口より東〜南方向の森林の破壊度が大きく、今後新燃岳で噴火が起きた場合、東〜南方向に被害が集中する危険性の高いことがわかった。
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