1997年の鹿児島県出水市針原川災害以来古い火山体の崩壊予測が大きな問題となっている。このような観点から霧島新燃岳火山および加久藤カルデラに起源をもつ古い火山体について調査研究を行った結果、以下のようなことが明らかになった。 霧島では1999年は地表面温度分布には大きな変化はみられなかったが、火口湖水位の著しく上昇がみられた。硫黄谷、新湯温泉、手洗温泉などの山麓一帯では熱水と化学変成作用による地層の深層風化、土壌硬度の低下が進み、大規模な地すべり性崩壊の起こる危険性がかなり高くなっている。火砕流炭化木の年代測定および年輪測定の結果から、霧島新燃岳ではほぼ200年〜300年周期で噴火が繰り返されている。古い火山体崩壊に属する1972年のえびの市西内堅の土石流について地形・地表、水文要因を分析した結果、同地域一帯では硫黄ガスの影響により変朽安山岩の著しい深層風化が進み、山体劣化が相当進行していることが明らかとなった。また、渇水期の渓流の流量観測により、すべり面と密接に関わっていると考えられる地下水層には、中腹斜面に位置する沼地(約0.3ha)に起源をもつ比較的浅いものと、これよりかなり深い層に起源をもつものの2つがあることがわかった。さらに、同流域における低次谷の縦断形状のもつ地形要因の分析の結果、1972年の真幸土石流発生地点の土砂流出危険度ポテンシャルが最も大きくなることが明らかにされた。
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