研究概要 |
火砕流模型実験の結果、矢岳川では先端部まで大礫が到達する可能性が高いこと、特に、停止点付近では火砕流ダストによる被害域が大きくなる危険性の高いことが明らかとなった。また、霧島現地地表面の温度分布測定結果により、新燃岳火口では高温域が次第に西側に移動しつつあること、山麓では熱水と化学的変成作用による地層の深層風化が進み、大規模な地すべり性崩壊の起こる危険性の高くなっていること、さらに、矢岳川の火砕流堆積物調査および火砕流炭化木の年代測定の結果から、新燃岳1噴火当たりの火砕流規模は6〜12×10^6m^3、温度は700℃〜1000℃、噴火周期はほぼ200年〜300年であることが明らかとなった。古い火山体では土壌硬度の著しい低下,深層風化による地下水層の形成、土砂流出危険度ポテンシャルがかなり高いなど、いくつかの地形・地質・水文的特徴の現れることが1972年のえびの市西内堅の土石流の発生について示された。また、これと同質の災害形態である鹿児島県出水市針原川土石流試料の流動試験の結果によれば、同土石流の濃度61.8%に相当する推定速度は3.5m/secとなり、実際の流速14〜23m/secと著しい相違を示した。このことから土石流先端部は洪水波だった可能性が高い。実験的シュミレーション手法により、ダム通過後土石流の人家到達までの時間は最大でも51秒しかなかったこと、ダム断面の大幅な不足が示されたことは、火山山麓の扇状地谷出口集落での土石流発生時の避難の難しさ、砂防構造物の設計外力予測の難しさを浮き彫りにした。
|