研究概要 |
今年度の主な調査研究結果は、以下の通りとなる。 1)造林,伐出等の木材生産費分析を行うことによって国産材供給増加の可能性について検討した。分析の結果,現在の価格水準では,造林,伐採等の生産費用を賄うことができないことが分かった。また造林補助金を考慮しても再造林できるほど十分な収入を得ることができず,新たな林業助成策が講じられない限り,我が国の持続的な林業経営を達成することが困難であることが明らかとなった。 2)将来的な木材安定供給を仮定し,森林伐採計画モデルを用いて,現在の森林資源賦存量を基に,伐採を行う際,如何なる条件下で,どの程度の量の木材が資源的に供給可能であるかを線形計画法により検討した。分析対象は,スギ生産日本一の宮崎県と,スギと競合関係にある米材の製材生産日本一である広島県という特色のある2県のスギ民有林である。総伐採量最大を目的とし、制約条件として森林面積他に,過去の伐採実績から急激な伐採量の変化を防ぐため,第10期までは前期の伐採量に対して±5%の変化率で許容量を設定し,それ以降は一定量で安定供給されるようにした。 分析の結果、宮崎県については,第10期まで許容率10%を用いた場合に第10期以降の1期(5カ年)当たり伐採量が最大値9490千m^3を示した。宮崎県における過去のスギ生産量の伸び率はおよそ20%である。広島県の場合,許容率30%を用いた場合に第10期以降の1期当たり伐採量が最大値2095千m^3を示した。広島県における過去のスギ生産量の伸び率はおよそ-12%となっており,年々減少傾向にある。許容率が宮崎県と比較して高い数値を示した要因として,両県の林業を取り巻く環境の違いがあげられる。例えば,宮崎県と広島県の平成7年における労働生産性と平均林道密度はそれぞれ,前者が3.58m^3/人日,1.82m^3/人日で,後者が20.4m/ha,14.8m/haである。よって,広島県は相対的に生産基盤が整備されていないといえる。また,安価な米材の市場価格への影響が宮崎県よりも大きいと考えられること,従来スギよりもヒノキ生産の意識が強かったこと等から,広島県では資源量に見合ったスギの生産が困難になっていると推察される。
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