研究概要 |
平成10年度は,隠岐島および琵琶湖北西部において堆積物を採取し,花粉分析を行った。その結果は,下記のとおりである。 1. 都万湿原(仮称) 隠岐島に位置する島根県隠岐郡都万村の都万湿原において,深度9.25mの堆積物を採取した。この堆積物の最下層から深度7.5m付近までは,火山灰,7mより上部は,泥炭と有機質粘土からなり,花粉分析として良好なものであった。 この堆積物の放射性炭素年代測定の結果は,深度3.56mで19460±60年前(Beta-125951),1.80mで12680±80年前(Beta-125950),1.23mで10620±60年前(Beta-125952)であった。また,7.5m以下の火山灰は25000年前に堆積した姶良Tn火山灰であった。花粉分析の結果,最終氷期最盛期の約20000年から15000年間に対応する堆積物中で,ツガ属,カバノキ属花粉が優勢であるがスギ属が約10%を示した。このことから,隠岐島は最終氷期最盛期におけるスギの逃避地であることが明らかになった。 2. 八丁田湿地 琵琶湖北西に位置する滋賀県高島郡饗庭野の八町田湿地において深度2.1mの堆積物を採取し,放射性炭素年代測定および花粉分析を行った。その結果,完新世初期からスギの優勢な森林が形成されていたことが明らかになった。 今後の研究の展開 平成10年度に隠岐島での成果は,最終氷期におけるスギ林の分布を解明するために極めて貴重な資料となった。 今後,完新世の隠岐島におけるスギ林の変遷を解明する必要がある。そのため,平成11年度には,隠岐島において,完新世の堆積物を採取し,花粉分析を行う。あわせて,これまで採取した堆積物の詳細な分析を進める。
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