研究概要 |
京都府船井郡日吉町畑郷の蛇ヶ池(標高600m)においてボーリングを行い,深度905cmまで堆積物を採取した。この堆積物の放射性炭素年代測定結果は,深度458-462cmの材片で,23600±300年前(Beta-149294),深度126-127cmの植物遺体で4160±50年前(Beta-149296),深度40-40.7cmの炭化片では,2440±40(Beta-149295)であった。また,293.0-296.4cmの火山灰は,6300年前に堆積した鬼界-アカホヤ火山灰であった。 花粉分析の結果,次のような植生変遷が明らかになった。24000〜10000年前の最終氷期にはマツ科針葉樹の優勢な針葉樹林が広がっており,10000年前以降の後氷期初期からコナラ亜属,クリが優勢でスギが増加し始めた。6000年前以降,照葉樹が増加するがスギも約2500年前まで約20%の出現率を示し,森林を構成する主要な樹種であったと考えられた。また,2500年前以降,スギは急増し優勢となったが,歴史時代に人の影響で,二次林へ変化した。本調査地は,日本海側と太平洋側の中間に位置するが,後氷期初期にスギが増加し始めることから,最終氷期終了後日本海沿岸部のスギの逃避地から,スギが分布拡大した地域であることが明らかになった。 高知県南国市伊達野(標高約5m)の水田において,深度565mの堆積物を採取した。この堆積物の深度278-289cmに鬼界-アカホヤ火山灰が介在していた。中村純(1965)が伊達野で花粉分析結果を発表しているが,今回の調査でアカホヤ火山灰の層準を明確にしたことから,日本海側の花粉分析資料と比較することができるようになった。
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