本年度は、先孔クリアランスを持つ鋼板挿入型ドリフトピン接合部に一様曲げモーメントを加えて破壊試験を行った。試験材料にはダグラスファー集成材と径10mmのドリフトピン、厚さ6mmの鋼板を使用した。鋼板の先孔径は11、12mmの2種類、ドリフトピンの径長比(木材厚/ドリフトピン径)は6、12の2種類、接合部を構成するドリフトピン本数は4本、8本の2種類とした。集成材の先孔はドリフトピンと同径とし、先孔クリアランスは鋼板側で設定した。この実験では、スパン中央部のたわみを測定する他に、接合部変形過程における回転角と回転中心の移動を連続的に測定し、接合部回転の増大につれて、各ドリフトピンの実際の分担力がどのように変化し、それにともなって接合部回転中心がどのように移動するかを観察した。 主要な実験結果は次のようであった。 1.接合部回転中心はほとんどの試験体で図心と一致せず、変形過程で移動することが明らかとなった。 2.径長比の大きいドリフトピンを使用した方が相対的に最大耐力が高い値となった。 3.今回の実験ではクリアランス1mmと2mmとの間にあまりはっきりした違いは認められなかった。 4.ドリフトピンが4本の方が8本よりも相対的な最大耐力は高かったが、この差は接合具本数よりむしろ接合具間隔の違いによるものと判断された。この結果から、接合部有効耐力は先孔クリアランスの影響と接合具配置の影響を同時に受け、個々に分離することが難しいことがわかった。
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