研究概要 |
平成9年度は、当初の計画通り2種類の先孔クリアランス(1,2mm)、2種類の径長比(6,12)、2種類のドリフトピン本数(4本、8本)を想定し、モーメント抵抗ドリフトピン接合部の有効耐力について実験的検討を加え、以下のような結論を得た。1.接合部回転中心は個々に異なり、また変形過程で移動することが観察された。2.径長比が大きく、靭性の高い方が最大耐力が大きかった。3.今回の実験では、ドリフトピン本数の少ない方が最大耐力が大きかったが、これは主として接合具間隔の違いによると判断され、先孔クリアランス影響と接合具配置影響を個々に分離することが難しいことがわかった。 平成10年度は、当初の計画通りドリフトピン1本のせん断耐力試験を行い、その結果を基に、すべてのドリフトピンが有効に働くと仮定した変形耐力解析を行うとともに、更に対角線上の2本のドリフトピンを一組とした簡単なモンテカルロシミュレーションも試み、以下のような結論を得た。1.接合部の有効剛性は、モンテカルロシミュレーションによって適切に推定できること、より実用的には先孔クリアランスの半分を初期ギャップとする確定的解析法でもおおまかな評価は可能であることがわかった。2.この研究では、最小端縁距離を設定した引張型2面せん断試験から、ドリフトピン1本のせん断耐カを求めたが、モーメント抵抗接合部では、端縁距離、接合具間隔と先孔クリアランスの影響が複合的に作用するため、この方法で最大耐力を予測すると、実際より過小評価となることがわかった。3.接合耐力に及ぼす端縁距離、接合具間隔の影響を捉えるため、引張型と圧縮型の2面せん断試験結果を恣意的に組み合わせた解析結果と実験結果を比較した結果、実際のせん断耐力は最小端縁距離を想定した耐力と比べ、かなり高くなることがわかった。今後は、これらの複合的な影響についての検討が必要である。
|