研究概要 |
報告者等は木材抽出成分の高度有効利用法開発のひとつとして、樹木フェノール性成分の抗酸化活性に注目して研究を続けている。本年度の研究では、これまでの検討において優れた活性を有することが明らかになったフラボノールの1種、クエルセチンについて、ラジカル捕捉能の点からさらに詳しく研究し、この成分の抗酸化活性上の位置づけをより確かにすることにした。 研究では、これまで未検討であった天然性のカルコン、アウロン、イソフラボンなどのフラボノイド類、立体異性体のある4種のカテキン類、フラボノイド配糖体とそのアグリコンについて1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)に対するラジカル捕捉活性を通常の分光学的方法とストップトフロー法によって測定し、これまでのクエルセチンやフィセチン等のフラボノール類の結果と比較した。また、すでに情報を得ている既知の抗酸化性化合物についてストップトフロー法によって測定してラジカル捕捉定数を求めた。 その結果、フラボノイドの2個の芳香環上の同じ位置に水酸基を有するものの間ではフラボノールが最も強い活性を示すこと、一連のラジカル捕捉活性の比較から、抗酸化化合物には速効性を示すクエルセチンやフィセチン等のフラボノールと、遅効性を示すエリオジクチオール(フラバノン)、ブテイン(カルコン)、カテキン(フラバン-3-オール)などに区分できること、クエルセチンは既知の抗酸化化合物と比べても、優れた活性をもつことなどを明らかにした。
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