ケナフ原料として中国産の精練発酵ケナフ靭皮繊維(CBFと略す)と日本産の未精練ケナフ靭皮繊維(JBFと略す)の2種類を用い、木材に対して汎用されるソーダAQ法とクラフト法に加えて常圧ソーダ法を用いて蒸解を行った。ソーダAQ法、クラフト法ともにケナフ靭皮繊維に対し良質なパルプを与えたが、CBFから調製されたパルプはJBFからのそれより高収率、低リグニン含有量、低灰分量であった。各パルプ化法より調製したパルプを漂白後、ビーターで叩解し濾水度と強度特性の関係を調べた結果、CSF400での引張り強度は常圧ソーダ、ソーダAQ、クラフトの順に高い値となった。 CBFとJBFから得られたパルプのハンドシートをコットンと同様の条件で実験室的にバルカン化し、得られたファイバーシートの強度特性を検討した結果、バルカン化は残留リグニンの影響を大きく受け、未晒JBFパルプでは進行し難いが、CBFパルプは未晒でも実用強度が得られた。ケナフシートはバルカン化により炭水化物の溶出を起こすが、特にヘミセルロース部分の溶出率が大きかった。引張り強度および層間剥離強度において、両ケナフのバルカン化シートはコットンリンターのそれに匹敵する値を有していた。バルカン化シートのSEM観察の結果、ファイバー表面は塩化亜鉛処理により著しく膠質化していた。以上からケナフ靭皮繊維はコットン代替材料として有望であることが分かった。 CBFとJBFのソーダAQパルプについて、バルカン化に及ぼすリグニン含有量の影響を検討した結果、JBFではリグニン含有量の低下とともにバルカン化度が向上し、含有量が0.4%以下で良品が得られたが、CBFではリグニン含有量が3%でも良好なファイバーが得られた。これは精練発酵処理の有無が影響していると考えられる。ファイバーのアセチル化により湿潤強度の向上が観察された。
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