木材の枠組に各種面材を釘打ちした壁パネル及び釘接合部について正負繰り返しせん断試験を実施し、耐力壁の地震時挙動解析モデル作成のための資料の収集を行った。耐力壁試験体は、S-P-F204材より成る枠組に厚さ9.5mmの針葉樹合板、OSB及び厚さ12mmの石膏ボードをCN50又はGN40で釘打ちしたもので、一方向加力試験、及び欧州規格に示された加力経歴による正負繰り返しせん断試験を行った。また、同種の面材をS-P-F204材の両面に釘打ちした接合部についても、欧州規格及びISO(案)による正負繰り返しせん断試験を行い、以下の結果を得た。(1)正負繰り返し試験より得た降伏せん断耐力は、一方向加力試験の結果と比べて、釘接合部で約10〜40%、耐力壁では約10〜20%低下し、繰り返し加力が耐力壁の耐力低下に著しい影響を及ぼすことがわかった。(2)釘接合部の試験結果より求めた耐力壁の降伏せん断耐力及び終局耐力の計算値は、実験値とよく一致し、釘の試験結果を基に耐力壁の降伏せん断耐力を推定することが可能であることがわかった。(3)欧州規格に基ずく耐力壁の降伏せん断耐力の評価値は、壁パネル脚部の回転や加力経歴に左右されることがわかった。また、これを改良した方法によると、耐力壁の降伏耐力が適切に評価された。(4)正負繰り返しせん断試験より、耐力壁の終局耐力を求めると、降伏せん断耐力の約1.7倍となり、また塑性率は7.6〜13.6と大きな値を示した。このことより、一般に枠組壁工法建築物は、大地震に対して十分な靱性を有していることがわっかた。
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