人が居住する住宅内では、外部から侵入する余分な音がなく、内部で発生する音も壁、天井などに吸収されあまり反響しないということが望まれる。静けさを求めることが住宅内の音環境の快適化と考えられる。住宅内には音声、動作音、音響電気機器など種々の音源がある。人の耳は、音源からの直接音と時間的にわずかに遅れた天井、壁、床などからの反射音(残響音)を同時に聴く。つまり、心地好い音環境は天井、壁、床の吸音、反射特性がバランスよく設定され適度な残響特性を有し、卓越的な周波数特性を有しないことにあると考えられる。そこで、本研究では、瞬間音響インテンシティ(ISI)により、音波の伝播経路、吸音、反射の態様を解析し、住宅内の音環境特性を評価する最良の手法を確立することを目的とする。 本年度は、ISI法の基本的計測、解析手法を検討した。壁、床がコンクリートで、天井が多孔質吸音板材料構成される名古屋大学農学部の研究室内で実験を実施した。0.2秒間隔に間欠的に繰返される5000Hzのエクスポネンシャル減衰波形列の音波をスピーカーより天井、壁、床に向けて放射した。周期0.004秒、件数1024を1フレームとして連続200フレームのサンプリング条件で、計0.8秒間2チャンネル時系列音圧データを捕捉した。瞬間音響インテンシティ解析を行い、0.004秒毎にISIの時間に対する符号および値の変化を求めた。マイクロホンと天井、壁、床との距離および音速より、直接音に対する壁からの反射音のマイクロホンへの到達時間および天井からの反射音の到達時間を算出した。反射音の到達時間でISIの符号が反転し、吸音特性をもつ天井からの放射音のISI値は壁や床からの放射音に比べ有意に小さくなった。これらの結果より、瞬間音響インテンシティは、壁、天井などの居室の構成材料、表面構造による反射音特性(残響特性)を正確に、かつ簡便に評価できる確証が得られた。
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