住宅内で、人の耳は音声、動作音、音響機器などの種々の音源から直接音と時間的に僅かに遅れた天井、壁、床などからの反射音(残響音)を同時に聴く。心地よい音環境は天井、壁、床の吸音、反射特性がバランスよく設定され適度な残響特性を有し、卓越的な周波数特性を有しないことであると考えられる。本研究では、音をベクトル量で取扱い音響エネルギー流れ、定在音場を表現する複素音響インテンシティ法により、音波の伝播経路、吸音、反射の態様を解析し、住宅内の音響環境を評価するための最良の音響インテンシティ解析手法を確立することを目的とした。 従来の音響インテンシティ法ではデータ算出のためのサンプリング時間が長いため、音波が伝播していく経過までは捕捉できない。音響インテンシティ演算のためのサンプリング時間が1mSの瞬間音響インテンシティを0.5S間連続測定可能とした。壁、床がコンクリートで、天井が多孔質吸音板材料で構成されている居室内で、0.15Sの間欠エクスポネンシャル減衰音波をスピーカより放射し、瞬間複素音響インテンシティ計測を実施した。スピーカ、天井、壁、床、マイクロホンの距離、音速より、直接音に対する壁からの放射音のマイクロホンへの到達時間および天井からの放射音の到達時間でのアクティブ音響インテンシティの符号が反転し、天井からの反射音のインテンシテイ値は壁や床からの放射音に比べ小さくなった。これより、居室の構成材料の表面構造による反射音特性(残響特性)をある程度評価できる確証が得られた。
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