樹木精油中の主要成分を比較的簡単な反応で化学変換することにより精油自身の生物活性、特にシロアリに対する殺蟻活性を高めようと試みた。生物試料としては高知県で採取したイエシロアリを用いた。反応生成物は主に、キャビラリーガスクロマトグラフィーで同定・定量を行なった。樹木精油に多く含まれるα-ピネンを5%の希硫駿で処理すると、約22モル%の収率で殺蟻活性を有するα-テルピネオールが生成し、比較的簡単な方法により精油の殺蟻活性を高めるごとができることを明らかにした。更に、3種類のスルホン酸でα-ピネンを処理すると硫酸処理に比べてα-テルピネオールの収率が著しく向上することを明らかにした。特に、p-フェノールスルホン酸で10時間処理するとα-ピネンおよびβ-ピネンからそれぞれ約47モル%、約59モル%の高収率でα-テルピネオールが生成することが分かった。α-ピネン自身は全く殺蟻活性は持たず、精油中のα-テルピネオール濃度が高まるほど殺蟻活性は増加した。d-リモネン、β-ミルセンも同様の処理により、幾つかの反応物を生じるが、α-テルピネオールの生成量は軽く微量であった。精油のスルホン酸処理によりα-テルピネオール以外にも多くの化合物が生じるので、その中で殺蟻活性を有する物質を現在調査中である。本年度の研究により、マツ、スギ、ヒノキ等の精油に含まれる主要成分の反応については概略把握できたと考えられるので、次年度からは更に殺蟻活性の高いα-テルピニルアセテートヘの変換を検討すると共に、樹木精油そのものへの応用を進めることができるものと思われる。
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