研究概要 |
昨年度に引き続き,今年度も樹木精油の殺蟻活性を向上させるために,モノテルペン類および樹木精油を用いて,比較的簡単な水和反応による活性成分の誘導を試みた。活性成分であるα-テルピネオールを最も効率よく生成させるp-フェノールスルホン酸による処理を検討した結果,試料中のモノテルペン炭化水素の存在量が減少し、それに応じてα-テルピネオール、4-テルピネオールなどのテルペンアルコールの増加が見られた。しかし、反応時間を10時間以上に伸ばすと、再度、d-リモネンなどのモノテルペン炭化水素に変化することを明らかにし,反応時間は10時間以内が好ましいことを明らかにした。マツ、スギ、ヒノキの精油の加水分解反応を検討した結果、マツ中のα-ピネンはα-テルピネオールに変化していることが分かった。しかし、マツ由来の精油である市販のターペンチンでは元々のα-ピネン、β-ピネンの存在量が少ないために、α-テルピネオ-ルの生成量はそれほど多くなかった。スギ精油も市販のターペンチンと同じくα-ピネン、β-ピネンの存在量は少なかった。ヒノキ葉精油ではα-ピネンの代わりにサビネンの存在量が多く、加水分解反応により4-テルピネオールが多く生成することが分かった。これらの反応生成物を用いて,イエシロアリ,ヤマトシロアリに対する殺蟻活性試験とJISの防カビ試験に指定されている5種類のカビに対する抗菌活性試験を行なった。殺蟻活性は反応時間の増加に伴い,著しく増大した。ただし,スギの精油など,α-ピネンなどの成分量が元々少ないものでは,殺蟻活性成分であるα-テルピネオールなどの生成量も少なく,そのために殺蟻活性もそれほど向上しなかった。抗菌活性についても,加水分解処理により活性は向上した。例えば,α-ピネンにはほとんど活性は見られなかったが,加水分解反応により抗菌活性は著しく向上した。
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