研究概要 |
シイタケ菌床栽培に適した菌株を判定するために、菌床の水分環境の変化に着目した。菌床の水分環境は水ポテンシャル(ψ)で評価した。 (実験) 1. シイタケ菌の品種として、高温性(KS-58).低温性(KS-24).周年性(KS-9)の3品種を取上げた。 2. 菌床の調製生、植菌、培養は定法どおりに行った。3品種のシイタケ菌をそれぞれ接種し、培養期間を70,75,80,85,90日の5段階として熟成度が異なる菌床を調製した。子実体発生は低温処理を施し、1回目発生を誘起した。2回目発生、3回目発生前には、それぞれ浸水処理を行った。培地の熟成度の指標として水分環境を取上げ、子実体発生前後の菌床のψをサイクロメーターで測定した。 3. シイタケ菌の品種が培養期間を変えた場合、どのように菌床熟成度に影響するかについて、ψを測定し数値化でき子実体発生量との関係を検討した。 (結果) 菌株の品種によって熟成度の進行度合が異なることが明らかになった。 高温性品種が最も早く、次いで周年性品種、低温性品種は菌糸蔓延速度がゆるやかであった。高温性品種では、70、75日培養のような短期間で熟成度が上がり、周年性品種では、80,85日培養が適切な期間であった。低温性品種では、90日培養でも適切な熟成度が得られなかった。 子実体発生特性は、高温性のように熟成度の進行度合が早いものは、1回目発生が多く、2回、3回目発生量は少なくなる傾向がみられた。周年性品種でも、高温性品種と同様の傾向が認められた。低温性品種では、培養期間内では適性熟成度まで達することができず、90日培養でも1回目発生量は少なかった。培養期間が進んだ2回目発生では、1回目発生量が少なかった低温性品種で良好な発生傾向が認められた。 以上のように、種菌品種によって適正熟成度に達するまでの培養期間に違いがあることが明らかになった。水分環境をψで表せば、正確に客観的数値として菌床の熟成度が把握できることが新たに分った。 (今後の計画) 次年度は3年計画の最終目標として、シイタケ菌床栽培に向いた種菌品種を選抜し、菌糸蔓延と子実体発生段階での酵素活性変動ならびに、それらの遺伝子の消長について検討する予定である。 これらは、発茸遺伝子に関する試験の予備試験としてとらえている。
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