本研究の目的は、ウナギ脳下垂体の生殖腺刺激ホルモン(GTH)の合成機構を詳細に調べることである。本年度は、サケ脳下垂体投与により催熟されたウナギ雌の成熟に伴うGTH産生細胞の変化を免疫組織化学的手法を用いて調べた。脳下垂体は卵巣中の卵母細胞の発達に伴い肥大し、催熟処理前と比較して核移動期に達した個体では、体積で約2倍になった。この脳下垂体の肥大は主にGTH II産生細胞の肥大によるものと思われた。すなわち、GTH IIβ陽性細胞は処理前の個体では検出されないか、わずかであったが、卵母細胞の発達に伴い著しく増加し、核移動期には細胞の大きさは約10倍に達した。GTH II産生細胞は主に主葉基部(PPD)に存在した。一方、TSH産生細胞は催熟処理前から主葉端部(RPD)に比較的多く存在し、細胞の肥大は約1.5倍程度に留まった。TGH IIβ及びTSHβ陰性のα陽性細胞(β陰性α細胞)すなわちGTH I産生細胞と考えられる細胞はPPDに観察され、催熟処理前の個体で体積百分率で約10%存在したが、卵黄形成初期から中期に達した個体ではごくわずかとなり、核移動期の個体ではほとんど存在しないと思われた。 従って、雌ウナギの脳下垂体では、卵巣の発達に伴いGTH II産生細胞の数または大きさは急増、TSH産生細胞は大きさのみが微増するのに対し、GTH I産生細胞数は急減するものと推察された。
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