本研究の目的は、ウナギ脳下垂体の生殖腺刺激ホルモン(GTH)の合成機構を詳細に調べることである。本年度は、GTHIβおよびIIβのRT-PCR法を開発し、サケ脳下垂体投与により催熟したニホンウナギの脳下垂体について、それらの発現変化を調べた。その結果、GTHIβmRNA量は、成熟に伴い減少するのに対し、GTHIIβmRNA量は増加した。また、GTHIβの合成オリゴペプチドを抗原とする特異抗体を作製し、すでに作製済みのGTHIIβ抗体も用いて、催熟したニホンウナギの脳下垂体について、それらの免疫組織化学的変化を調べた。その結果、それらはRT-PCRの結果と同様の変化を示した。また、GTHIβおよびIIβの発現制御機構を詳細に解析するための器官培養系の確立も試みた。未熟雄の脳下垂体をエストラジオール-17β(E_2)の存在または非存在下で1週間培養した。その結果、培養液のみで培養された脳下垂体では、ほとんどGTHIIβ陽性細胞が観察されなかったのに対し、E_2存在下で培養された脳下垂体中には、多量のGTHIIβ陽性細胞が観察された。次に、GTHIおよびIIの微量定量を目的とするRIA確立のため、それに使用するスタンダードとして、組み換え大腸菌由来のリコンビナントGTHIβおよびIIβの作製を試みた。その結果、大腸菌でそれらを合成させ、精製することに成功した。しかし、RIAの確立には至らなかった。 以上の結果を昨年度の報告と合わせ報告書としてまとめた。
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