研究概要 |
内湾域における窒素・リンの輸送,一次生産の仕組を,大阪湾・紀伊水道系,伊勢湾,東京湾,五ケ所湾において明らかにした。特に,貧酸素氷塊の挙動との関連を重視した。本研究の副課題は下記の通り。 1. 大阪湾の窒素・リン収支: 瀬戸内海に,外洋から大量の窒素・リンが夏季に流入していた。大阪湾・紀伊水道系において,陸起源および外洋起源の窒素・リンの輸送量を通年にわたり実測し,その収支を明らかにした。リンは陸上負荷の10〜20%が堆積し,残りは外洋に流出している。一方,窒素は陸上負荷の半分以上が大阪湾内で除去されており,脱窒による大気への流出が示唆される。 2. 内湾域の流動および窒素・リン輸送と一次生産の仕組み -特に貧酸素水塊の挙動との関連-: 流れ,特に湧昇流と一次生産は密接に関連している。内湾域における湧昇流速とその鉛直分布を明らかにした。貧酸素水塊の中には高濃度の栄養塩が含まれており,そのNP比は周囲の海水中とは異なる.貧酸素水塊は,外洋水の間欠的流入にともなって,揺れ動いている。外洋水の底層への進入が大規模に起きると,貧酸素水塊は持ち上げられ,“中層貧酸素水塊"となり,無機窒素・リンを中層に運ぶ。中層貧酸素水塊は,伊勢湾・東京湾・五ケ所湾のいずれでも,たびたび起きていた。このとき,湾外へのリンの選択的な流出が東京湾で起きていた。貧酸素水塊の消長のほとんどは,物理過程で説明される。 3. 一次生産および制限要因の空間分布および時間変動 -モデル関数法の開発-: 従来の一次生産測定法では,一次生産・制限要因の分布や時間変動を測ることはきわめて困難である.これらを推定できる新しい方法を開発した。 4. 地球自転効果のもとでのエスチュアリー循環流エスチュアリー循環流は鉛直循環流であり,これに対する地球自転の効果を研究した。本研究の結果は,世界の多くの内湾で成り立っていることが示されつつある。
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