研究概要 |
ウイルス性神経壊死症の原因ウイルスである魚類病原ノダウイルスは、分子進化学的に4つの遺伝子型(SJNNV、TPNNV、BFNNVおよびRGNNV型)に分類されるが、これらの血清学的関係および感染防御抗原に関する解析はほとんど成されていない。本研究では、遺伝子型の異なるノダウイルスの血清学的関係を明らかにするとともに、本ウイルスの感染防御に関与する抗原の構造解析を行った。昨年度は、SJNNV外被タンパク質遺伝子の塩基配列を基に、遺伝子型の異なるウイルスの外被タンパク質遺伝子を部分的に発現させる系を確立した。本年度は、各遺伝子型ウイルスの発現外被タンパク質を用い、以下の成果を得た。1)まず、各遺伝子型ウイルスの発現タンパク質を精製し、抗SJNNV血清との反応性について検討した。その結果、抗SJNNV血清は遺伝子型の異なるウイルスの発現タンパク質とも交差反応を示したが、その反応強度に明らかな差が認められた。したがって、遺伝子型の異なるウイルスは多数の共通抗原を有するが、血清学的には同一でないことが明らかになった。2)SJNNVの中和活性を有する単クローン抗体を用いた解析では、SJNNVと他の遺伝子型ウイルスとは明らかに異なることが示された。さらに、同単クローン抗体はSJNNV外被タンパク質のアミノ酸配列(aa)254-256に存在するPro-Ala-Ansを認識していることが示唆され、本アミノ酸配列がSJNNVの感染防御に関与する抗原の一つであると考えられた。3)他の遺伝子型ウイルスにおける(aa)254-256は、各々Pro-Pro-Gly,Pro-Glu-GlyおよびPro-Asp-Glyで、各アミノ酸配列はTPNNV、BFNNVおよびRGNNV型ごとに保存されており、遺伝子型の異なるウイルスは血清学的にも異なると考えられた。4)また、本実験過程においてSJNNV非構造タンパク質遺伝子(RNA1)の全塩基配列を決定し、RNA1にコードされているタンパク質がRNA-依存RNAポリメラーゼであることが明らかになった。
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