研究概要 |
赤潮が多発する広島湾の海水中に含まれる、有害赤潮Gymnodinium mikimotoiが増殖に利用できる有機態窒素・リン濃度をAGP試験によって評価した。都市排水・産業排水による汚染が進行した広島湾では、有機態リン濃度は無機態リンと大差がないものの、有機態窒素濃度は無機態窒素を数倍程度上回った。広島湾の現場海水中に存在する本藻が増殖に利用できる窒素の全量のうち、利用可能な有機態窒素は平均約50%を占めた。一方、リンに関しては、利用可能なリン全量のうち有機態リンは平均27%を占め、全試料の約1割が有機態の寄与が無機態のそれを上回った。このことから有機汚濁水域には、無機態窒濃度に匹敵する赤潮藻が利用可能な有機態窒素が、また無機態リン濃度の1/2に相当する利用可能な有機態リンが含まれ、赤潮の発生予察や防除にはこれら有機態窒素・リンの寄与を無視できないことが明らかになった。 代表的な沿岸赤潮原因藻、Skeletonema costatum,Heterosigma akashiwo,G.mikimotoi,Chattonella antiquaについて、これらの有機態リン利用能の差違をアルカリフォスファターゼ(AP)産生の有無によって評価した。その結果、S.costatumはAPを構成的に、G.mikimotoiは誘導的に産生すること、H.akashiwoとC.antiquaはAPの産生が認められずこの2種は有機態のモノリン酸エステルを増殖に利用できないことがわかった。これらの結果は前年度の培養試験の結果ともよく一致し、有機態リンの利用能は種によって異なり、これらが赤潮藻の選択的増殖に相当大きく寄与していることが示唆された。
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