研究概要 |
スサビノリ野生株の藻体からプロトプラストを分離し、17種のアミノ酸を単独で異なる3濃度に添加したf/2培地で培養を行った。その結果、グルタミン酸、グリシン、タウリンなどの一部のアミノ酸はプロトプラストの発生を促進させたが、システィン、メチオニン、ヒスチジンはプロトプラストの発生を著しく阻害した。プロトプラストを変異原(エチルメタンスルホン酸)で処理した後、メチオニンを添加したf/2培地で培養を行った結果、メチオニン耐性株が分離された。メチオニン耐性株を室内培養して得た藻体中の遊離アミノ酸の組成・量を調べたところ、対照株に比較してアラニン、グルタミン酸、イソロイシン、スレオニンが増加し、タウリンが減少した。このことから育種素材として有用なアミノ酸抵抗性変異株の選抜が可能であると判断された。アマノリの栽培品種と野生種の藻体から分離したプロトプラストを用いて、栽培品種-野生種間、即ちスサビノリ(栽培品種、NBD,T-14株)と野生種のウップルイノリ、イチマツノリ、ヒロハマルバアマノリなどとの細胞融合を行った。融合細胞由来の単一の色彩からなる藻体の自家受精によって糸状体を得た。その糸状体を成熟させ、放出された殻胞子の発生体を室内培養と海での試験栽培を行いF1藻体を得た。それらのF1藻体について、葉形、単胞子形成、染色体数、光合成色素量、遊離アミノ酸量、耐病性などの形質を調べている。スサビノリとアサクサノリ(緑色株)、ウップルイノリあるいはウシケノリとの融合細胞からの再生株の一部では親株のスサビノリより赤腐れ菌、壷状菌への抵抗性が高いことが確認された。融合再生株の遊離アミノ酸量は両親株の中間程度である場合が多かった。 現在、新たな組合せの融合細胞からの再生体が得られつつあり、また栽培試験した藻体の詳細な形質を調べており、これらの結果を纏めさらに研究を進展させるよう計画している。
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