かけ廻し式底曵き網を例にとり、平成10年度には、9年度に設計した混獲防除型漁具を用いた試験操業を継続するとともに、網前方での混獲魚の対漁具行動の潜水観察、曳き綱の曳航中の軌跡に関する空中実験を組み合わせた、以下の研究を行った。 (1) 昨年度までの選択過程シミュレーションに基づき、目合いの拡大と網目の展開により選択性が改善されると期待して設計した混獲防除型底曵き網を用い、操業実験を行った。新供試網の選択性の選択性から、目合い拡大の選択性に与える効果はほぼ予測どおりであった。この結果から、目合い・選択体長管理図を提唱し、底曳き網による小型魚類の混獲を防止するための、実用的設計手法を発展させた。 (2) 上の結果を得た一方、底曳き網の混獲発生と選択機構を明らかにするために、掛けまわし式底曳き網操業時に漁具と魚類の行動の潜水観察を行った。繰り返し観察の結果、曳き綱は上下振動を行う場合があり、魚類は主網直前の曳き綱周辺では観察されず、混獲魚類はさらに前方に位置する曳き綱によって駆集されている可能性が高いと考えた。 (3) 上記の結果から、掛けまわし式底曳き網とトロール式底曳き網の選択機能の差に曳き綱が貢献しているものと考え、曳き綱の曳航時の軌跡に関する大気中実験を行った。各種の構造の曳き綱を各種の展張条件で実験したところ、縄の軌跡の差は主網よりはるかに離れた前方で大きかった。今後、主網ばかりでなく、綱の運動と綱が魚類に与える駆集刺激を研究する必要がある。 これらの成果の一部は、日本水産学会平成10年度秋季大会で口頭発表した。以上をもって、混獲防除型底曳き網の開発手法に関する研究を完了した。
|