(1)掛けまわし式底曳き網の選択機能に曳き綱が貢献しているものと考え、曳き綱の曳航時の軌跡に関する大気中実験を行った。実験をより現実的な漁具条件で行うために、全国の掛け回し式底曳き網の実態調査を行った。底曳き網の曳き綱の太さの長さ方向の分布はいくつかのまったく異なった形式に分類された。これらの大小2種類の縮尺模型を用いた空中実験を行ったところ、太さ分布により、曳航時の綱軌跡は異なるが、現行の漁法に近い初期展開の場合に漁獲効率は最大になることが分かった。 (2)掛けまわし式底曳き網に対する魚類の行動の潜水観察を行った。魚類は主網直前では観察されず、さらに前方で駆集されている可能性が高かった。 (3)エビ類の網目通過に関する小型水槽実験を行った。エビ類の漁具からの排除の確率を、1回網地遭遇時の網目通過確率とエビ類が網地と出会う回数との二つをパラメータとしてモデル化した。シミュレーションから、底曳き網のロジスティック型選択性は、動物と網地の繰り返し衝突に起因することを明らかにした。 (4)上のシミュレーションから、目合いの拡大と網目の展開により選択性が改善されると期待される混獲防除型底曳き網を設計し操業実験を行った。新供試網の選択性から、両要因の選択性に与える効果はほぼ予測どおりであった。これらをもとに、目合い-選択体長管理図を提唱した。 (5)実験研究と同時に、これまでの小型掛けまわし式底曳き網漁業の投棄実態調査の結果を分析し、多魚種漁業における投棄実態評価と投棄量の推定に最適なパラメータとして、単位努力量当り投棄量(DPUE)を提唱した。この結果は、国連が招聘した漁業の総合的モニタリングに関する会議で発表した。
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