1. 有節サンゴモのピリヒバ(Corallina pilulfera P.et R.)から生物試験を指標として分離したウニ幼生に対する着底・変態誘起物質は、すべてグリセロ糖脂質でSQMG、SQDG、MGMG、MGDG、DGMG、DGDGと同定した。 2. 磯焼け海域の優占種である無節サンゴモのエゾイシゴロモ(Lithophyllum yessoense F.)の抽出物からもこれらのグリセロ糖脂質を同定した 3. 上記の糖脂質の内、SQMG、MGMG、MGDG、DGMGは、ウニ浮遊幼生を誘引することも判明した。 4. 昨年度からの研究において、磯焼け海域において紅藻サンゴモ、ホソメコンブおよび捕食者であるウニの三者間の相互作用がアレロケミカルスを媒介として成り立っていることを明らかにした。すなわち、紅藻サンゴモは、コンブ配偶体の初期発生を抑制する物質を放出して磯焼け地帯へのコンブの入植を阻害するだけでなく、ウニ幼生を誘引し、着底・変態を誘起する物質(グリセロ糖脂質)を分泌し、さらにこの物質はウニ稚仔や成体の摂食刺激物質でもあるためにウニをサンゴモの群落に蝟集させ、その摂食圧によって食害を引き起こして磯焼け状態を持続させていると考えられる(論文投稿中)。 5. 海の砂漠とも呼ばれている磯焼けの海底でも、そこに棲息する生物種間における関係が「食うー食われる」の食物連鎖ばかりではなく、種々の生物活性を発現する化学物質を介して成り立っていることが明らかとなった。
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