昨年度までの研究において、磯焼け海域の優占種である無節サンゴモやサンゴモ上の付着珪藻類由来のアレロケミカルスが磯焼けの持続に深く関わっていることを明らかにした。 今年度の研究では、いくつかの新しい知見が得られたが、磯焼けの海底でのグロセロ糖脂質の機能については宿題として残った。 1.生物活性を発現したグリセロ糖脂質のグリセロール部のC-2位の絶対配置をキラルカラムを用いるHPLC法によって決定した。すなわち、サンゴモ由来のモノアシルグリセロ糖脂質(MGMGs、DGMGs、SQMGs)およびジアシルグリセロ糖脂質(MGDGs、DGDGs、SQDGs)のグリセロール部のC-2位の絶対配置はすべてR-配置であった(論文投稿中)。 2.付着珪藻由来のウニ幼生に対する着底・変態誘起物質およびコンブ配偶体に対する成長抑制物質の探索は継続中である。 3.生物活性を発現した付着珪藻は、継代培養によって徐々に活性が弱くなっていく傾向を示した。他生物が存在するか存在しないかで珪藻の代謝産物が異なることが示唆された。 4.サンゴモの培養液や磯焼けの海底で採集した海水からのグリセロ糖脂質の分離および同定は、今のところ不成功で現在さらに続行中である。 5.今後は、海水中に存在している微量生物活性物質(グリセロ糖脂質など)の検出および同定のための簡便な分析法を確立する。
|