本年度は三陸沿岸、東京湾、沖縄本部より採取した各種水産生物における3種の神経興奮性アミノ酸の分布を調べた。その結果、カイニン酸は亜熱帯海域で採取される紅藻フジマツモ科の海藻にのみ時には高濃度に検出され、東京湾および三陸沿岸で採取されたフジマツモ科の海藻にも、マクリが生育する周辺の海域から採取された緑藻、褐藻およびフジマツモ科以外の紅藻、さらには各地で採取された海産動物類には検出されなかった。ドウモイ酸は沖縄本部で採取されたフジマツモ科の海藻にのみ、極少量検出された。また、海産動物では東京湾で採取されたイシガニを含めた甲殻類の肝膵臓に少量検出され注目された。NMDAはアカガイの他、クマサルボウガイ、サルボウガイ、コベルトフネガイなどフネガイ科に属する二枚貝にのみ検出され、海藻、フネガイ科以外の海産二枚貝、甲殻類には検出されなかった。本年度は放射性同位元素で標識したD-アスパラギン酸、グリシン、アラニン、プロリンを用い、海藻マクリおよび二枚貝アカガイでトレーサー実験を試みたが、最終的な生合成の確認には至らなかった。この原因として、代謝産物をPTC誘導体に導いた後、ラジオHPLC分析する方法で分析したが、UV検出とラジオHPLCでの放射能の検出感度に大きな開きがあり、標識化合物の動きが追えなかったことによると考えた。そこで、RI標識試料の分離と放射能の確認をろ紙電気泳動とペーパークロマトグラフィーで二次元的手法で追跡する方法を考案し、高感度に代謝産物を特定することが出来るようになった。今後は迅速で高感度にトレーサー実験が可能になるものと考える。
|