N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)、カイニン酸(KA)およびドウモイ酸(DA)の3種のアミノ酸はこれまでの研究により、高等動物において神経興奮作用を示すとともに、高濃度では神経組織の破壊をもたらすなど神経毒アミノ酸として知られている。 本研究では初めにNMDA、KAおよびDAの3種の神経興奮性アミノ酸の一括定量法の検討を行った。その結果、試料エキスをDowex 1 酢酸型カラムを用いて前処理を行うことにより、妨害物質の除去と微量な神経興奮性アミノ酸の濃縮を可能にした。その後フェニルイソチオシアネートでPTC-誘導体化したのち、逆相ODSカラムでそれぞれを一括分離定量する方法を確立した。この方法で3種のアミノ酸が相互に分離し、DAが5pmol、KAとNMDAは10pmolの最低検出感度で定量できた。 海藻における3種の神経興奮性アミノ酸の分布では、NMAが最も広く分布し、KAおよびDAは沖縄など南西諸島で採取される紅藻フジマツモ科の海藻のみに分布するなど、分布によりことが認められた。動物類における分布では、NMDAがアカガイ、サルボウガイなどフネガイ科に属する二枚貝に広く分布することが確認された。DAは今回分析した範囲では東京湾で採取されたイシガニの内臓にのみ検出された。KAはいずれの試料にも認められなかった。NMDAおよびDAが含まれていた生物種はいずれも食用種であることより、微量な神経興奮性アミノ酸の長期摂取が人の健康に与える影響なども明らかにする必要があると考える アカガイ外套筋のNMDAは絶食、嫌気的条件、塩分濃度などの諸条件下では変動せず、光条件下で大きく変化することが確認され、外套筋が持つ光受容器官としての生理機能とNMDAが何らかの関係を持つことが示唆された。 アカガイのNMDAの生合成経路を解明すべく、14C-D-アスパラギン酸を用いたトレーサー実験を行ったが、D-アスパラギン酸からのNMDAを生合成を確認することは出来なかった。今後はD-アスパラギン酸以外からの生合成経路を探る必要があると考える。
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