研究概要 |
1)ホタテガイ細胞内への麻痺性貝毒取り込み過程の追跡:大船渡湾において有毒ホタテガイを採取し、コラゲナーゼを使って分散、分画して得た中腸腺の細胞内毒量をHPLCで調査した。細胞内には組織重量当たりの毒力をはるかに超える毒が検出され特に毒力の高い試料で顕著であったことから、細胞内への毒の取り込みが毒化機構では重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 2)ホタテガイ中腸腺細胞初代培養系の開発と毒の取り込み実験:高生存率の細胞を得るために、コラゲナーゼの種類等諸条件、長期生存のために培養温度等諸条件を検討した。しかし、3日間の培養で40%まで生存率が低下し、初代培養系の確立には至らなかった。細胞は呼吸酵素の活性は1/4,leucineの取り込み活性は1/2程度の活性を有していたので、培養液への毒の添加を試みたが、検出された毒は添加毒量の1/1000未満であり、最低毒量の天然試料の1%程度であった。吸着によると思われる量から18時間後も上昇がみられず、毒は細胞内に取り込まれていないと判断した。 3)飼育給餌試験による蓄積・代謝過程の追跡:アサリに培養した有毒渦鞭毛藻Alexandrium tamarenseを7日間毎日給餌し、その後8日毎日換水しながら飼育し、飼育海水を含む系内の全試料の毒量をHPLCを使って測定した。飼育中の糞に著量の毒が検出され、渦鞭毛藻と同じ組成を示したことから消化高率が低いことが明らかとなった。また減毒期に海水から毒が検出され、アさりと同組成であったことから、アサリの毒がそのまま排出されていることが示唆された。アサリからの減少総毒量の85%が海水および糞から回収され、解毒機構では分解よりも体外への排出が重要な役割を果たすと推定した。
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