研究概要 |
麻痺性貝毒による二枚貝の毒化は食品衛生および産業上重大な問題であるが、二枚貝による毒の蓄積・代謝の機構に関する知見は乏しい。本研究は、in vivo, in vitro両面で実験を行い、蓄積・代謝機構を細胞および分子レベルで追求した。 麻痺性貝毒の蓄積能の高いホタテガイの消化盲嚢の細胞を分離して毒量をHPLCで調査した結果、細胞内には組織重量当たりの毒力をはるかに超える毒が検出され、特に毒力の高い試料で顕著であったことから、細胞内への毒の取り込みが毒化機構では重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、取り込み機構を解明するために同細胞の初代培養系の開発を試み、培養液への毒の添加による細胞内への毒の取り込みを調べたが確認できなかった。培養細胞の状態の向上が必要と考えられる。 あまり毒化しない二枚貝の代表としてアサリの飼育実験による解毒機構の解明を行った。培養した有毒渦鞭毛藻Alexandriumtamarenseを給餌して毒化させた後、毎日換水しながら飼育し、飼育海水を含む系内の全試料の毒量をHPLCを使って測定した。飼育中の糞に渦鞭毛藻と同じ組成示す毒が著量に検出され、消化高率が低いことが明らかとなった。また、減毒期にアサリからの減少総毒量の85%に相当する毒が海水から検出され、アサリと同組成であったことから、解毒機構では分解よりも体外への排出が重要な役割を果たすことが明らかとなった。 二枚貝9種の消化消化盲嚢から粗酵素液を調製し、精製毒とともにインキュベートして麻痺性貝毒変換・分解酵素の検索を実施した結果、サラガイが基質特異性のない分解酵素を有することを明らかにした。
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